自治体広報の役割、今求められていることとは?

2023年07月26日

今、技術革新が進み、情報を発信・受信する手段も多様化しています。一方で少子高齢化や大都市一極集中による地方の人口減少など、社会の有り様はさまざま変化しています。

そうした状況の中で持続可能なまちづくりを進めていく際に、自治体広報の役割はこれまでにも増して大きなものとなっています。

この記事では自治体広報の役割や今求められていることを改めて見直してみましょう。自治体広報の成功事例についても紹介します。

自治体の広報活動とは

自治体における広報活動には、行政施策の方針やビジョンを地域住民に伝えるという大きな役割があります。

自治体が取り巻く環境は時代とともに変化しており、自治体広報においても広報誌などの紙媒体を主軸としつつ、ホームページやSNSなどの幅広いメディアにも対応していくことが求められます。これらを活用して街のプロモーションや社会福祉を追求することで、持続的な地域社会の構築につながるのです。

自治体広報がいま求められていることとは?

地域住民へ、自治体の情報を伝える

まずは何よりも正確な情報をわかりやすく伝えることが重要です。自治体の制度や取り組み、防災・災害情報などを発信することで、住民の満足度や安心感の向上につながります。

また、イベント情報や地域の見どころ、歴史、特色ある企業や店舗など地域の魅力を発信することで、住民が自分の住む地域に誇りや自信を持つことができるようになります。さらにはそれらの情報を地域外の人が受け取ることで、観光客や移住者も増え、長期的な地域の発展につながるのです

地域住民が必要としている情報を発信する

地域住民の満足度を向上させるためには、自治体からの一方的な情報発信を続けるのではなく、地域住民が求めている情報を提供する必要があります。

公益財団法人日本広告協会の調査によると
住民が望む自治体の情報として、

・健康
・福祉
・医療
・防犯
・子育て

などの情報を求めている方が、多いことがわかります。
これらを基に情報を届けることで、住民の地域での暮らしやすさなどにも影響を与えるでしょう。

また、地域住民への調査として、必要としている情報をアンケートなどを活用することで地域の方が現在本当に求めている情報について知ることができます。

地域住民・企業・行政をつなげる

地域のイベントや行事は地域の結束力を高める効果があります。しかし、それを企画しないことには、あるいは参加者が集まらないことにははじまりません。

地域を活性化させたい自治体や商工会議所、自治会、自社の商品やサービスをアピールしたい企業や商店、日々の生活に彩りを加えたい住民など、自治体広報を強化することで地域のステークホルダーと連携する機会が生まれ、より強いコミュニティが形成できます

地域外の方へ情報発信、PRをする

人口が減少するなかで地域に活気をもたらすためには、地域外からの移住者や観光客の誘致、インバウンド需要の取り込みが必須です。

自治体広報を強化して地域外の人々にもその街の魅力を知ってもらうことで移住者が増えれば、働き手が増え財政の改善につながります。観光客やインバウンド需要が取り込めれば、地域の企業や商店が潤います。地域活性化のためには対外的な自治体広報も非常に重要です

自治体の広報を行う上でのポイント

地域住民が求めていることを知る。

住みやすいまちづくりを実現するためには、住民が何を求めているか?を把握することが大切です。健康・福祉・医療介護、防犯・防災、環境・ゴミ・リサイクル等、ニーズは多岐にわたり、限られた人員と予算の中で特にどれを優先的に取り組むべきかを決める必要があります。

特にSNSでは双方向型の情報発信が可能です。地域住民が窓口に出向いたり電話をせずとも、コメントなどを通して気軽に自治体に対する要望や自分の考えを出すことができます。双方向型の自治体広報が実現できれば、より住民のニーズに合わせた政策が実現しやすくなります。

目的に合ったメディアでの情報を発信する

情報を発信する手段として、現在はさまざまな媒体があります。InstagramやYouTubeと言ったSNS、ホームページや自治体独自のアプリ、広報誌やチラシ、地域の掲示板など情報技術の発達により、地域の方へ情報を届けるための手法が多く存在します。
また、媒体によって見られている年齢層も異なるため、目的を明確にし、届けたいターゲットに合った媒体を選択することが重要です

それぞれの自治体広報としての成功事例を知る

自治体の広報として、他地域の成功事例を調査し、知っておくことも非常に重要です。どういったメディアを活用し、どのような情報を発信したことによって注目を集めることが出来たのかや地域の活性化に貢献した事例があるのかを知ることで情報発信の幅を広げ、活用することができます

自治体広報の成功事例を紹介

徳島県神山町【企業と住民をつなぐ】

徳島県では日本の田舎をステキに変える「サテライトオフィスプロジェクト」として、企業誘致や雇用の創設、移住者の増加施策に取り組んできました。カバー率98.8% のFTTH網と公設民営方式の光CATV(加入率88.3%)という全国屈指の高速ブロードバンドネットワーク環境を整備。古民家を活用したオフィスの開設や通信費など運営費用の補助支援も充実。さらにはサテライトオフィスの整備やICTベンチャー企業の誘致を推進しました。

その結果、徳島県内の5市町に31社・26拠点が進出して、3年間で76世帯113名が移住し、56名の地域雇用が創出されました

とりわけ昭和45年以降から社会減が続いていた神山町では、4年間で64世帯102名が移住し、平成23年には社会増に転じたのです

岐阜県東白川村【自治体がマッチングの仕組みを構築】

岐阜県の中東部に位置し周囲を山々に囲まれた東白川村では主要産業である材木加工業者・住宅建築業者と、村役場の職員が一体となり、「フォレスタイル 森の恵みに満ちた暮らし方提案ウェブサイト」という施策を実施。村内外の住宅建築予定者向けに、住宅の間取りや費用を自由に設計できるシミュレーターと、最適な建築士や工務店を代理人(村役場の職員)がマッチングするシステムが搭載されたサービスです。

高品質で低コストな国産材を活用し、デザイン性・機能性が高い住宅を受注できる仕組みを構築することで、林業・建築業の6次産業化に成功。第3回全国村長サミットで「村オブザイヤー(最優秀賞)」を受賞しました。

平成21年から27年の6年間で国産材を使った住宅の受注件数は153件、売上高は40億円、他地方からの新規顧客も獲得しているということです。また、直近3年間で村内の森林組合木材出荷量は73%、建築業の売上は70%、村民1人あたりの所得は16%増加しました。

青森県【自治体と観光協会連携】

青森県では「地域の埋もれた魅力を浮上させる青森県観光モデル」として、地元の生きた情報をもとに観光客が自在に観光ルートを設計できるシステムを民間ベースで開発。自治体と観光協会が連携して地元の観光情報を発信し、これまで知名度が低かった観光スポットの開拓にも成功しました。

県外からの観光客は10%、宿泊費は19%、域内交通費は24%増加。現在では青森県内の30市町村や団体が活動を展開し、域外からの観光客の誘致や地元での消費増に寄与しているということです。

まとめ

情報発信・収集の方法が多様化し、人口が減少している中、自治体広報が地域の活性化の一つの大きなポイントといえます。地域の内外に情報をわかりやすく伝える、地域住民のニーズを把握する、地域住民や企業、行政とのコミュニティを強化することで、地域の発展につながります

自治体広報を見直し新たな取り組みを実践することで、移住者や観光客の獲得、企業の売上や住民の所得アップを達成した事例もあります。その多くはインターネットを用いた情報発信を用いています。

特にSNSやアプリを活用することで、住民や観光客、移住希望者が欲しい情報をタイムリーに発信できる、これまで情報が行き渡りにくかった層にもアプローチできる、緊急時でもすぐに情報を届けることができるなど、さまざまなメリットが得られます。情報発信の手段として、これらのツールも積極的に活用してみましょう。